個人事業主とクレジットカード
個人事業主の方は属性が弱く、クレジットカードの発行が難しい状態が長く続きました。収入は多くても安定さに欠ける個人事業主は、信頼にかけると判断されてしまうためです。
クレジットカードに申し込んでも審査落ちが続き、悔しい気持ちを抱える個人事業主は少なくありませんでした。しかし、個人事業主がクレジットカード難民だったのは過去の話です。現在では、クレジットカード審査の多様化や競争の激化により、個人事業主の方でも審査に通過できるケースが増えています。
個人支出と事業支出
個人事業主の方に共通する特徴が、個人支出と事業支出が混在していることです。
事業単位が個人なので個人のための支出と事業のための支出が混在しやすく、事業のための支出を個人向けクレジットカードで決済するケースは少なくありません。お得なポイント還元目当てに積極的に個人カードで事業支出を決済する人もいますが、実はそのようなお得な特典目当てで事業支出を決済する行為が、カード会員規約に抵触する可能性があることは案外知られていないのです。
個人向けクレジットカードで決済が認められるのは個人の支払いのみ
ほとんどの個人向けクレジットカードでは、「カードで決済が認められるものは個人の支払いのみ」と会員規約で規定しています。規約の細かいニュアンスは異なりますが、「現金化や販売を目的とした商品・サービスの決済などにカードを使用してはならない」といった内容が記載されているのです。
この規約は個人の利用や所有を目的とした決済のみにカードが使えると規定したものであり、販売を前提とした仕入れや買い付けにクレジットカードを利用して決済することを禁じるルールと解釈できます。この規約に違反する行為があるとカード会社が判断すれば、クレジットカードは即時停止になり、お得なポイントどころかクレジットカード会員を除名されてしまいます。
解釈はケースによって異なるが基本的に事業支出に個人向けクレジットカードを使うのはNG
現金化や販売を目的とした商品・サービスの決済に個人向けクレジットカードを使うのは規約違反です。しかし、個人事業主の場合は事業支出と個人支出を区別するのが難しい部分があるのも事実です。実際にはそれほど細かくチェックが行われることはなく、交際費として処理される飲食代金や備品の購入費、交通費などを個人カードで決済していても税務申告では事業支出として認められています。
カード会員規約には「事業目的の利用は禁止」とは明確に書かれておらず、解釈によって適用の幅が変わります。事業の規模が大きく、決済が明らかな商品仕入れ目的である場合は違反になりますが、仕入れ以外の支払いに関しては規約違反と判断される可能性は低いでしょう。
会員規約で禁じているのは、「現金化を前提とした商品購入」に限定されています。これはキャッシングでお金を借りられなくなった人が、カードで購入した商品をすぐに転売して現金に変える「カード現金化」と呼ばれる擬似キャッシング行為を制限するためのルールだからです。
本来は個人事業主の決済を制限する目的でつくられたルールではないのですが、規約を厳密に解釈すると仕入れ行為もルールに抵触するため、事業用の支出が規約違反になる可能性が疑われてしまうのです。
不明な点はカード会社に確認を
個人事業の決済に個人向けクレジットカードを使うのはグレーゾーンな部分が多く、絶対に安全とは限りません。不明な点はカード会社に連絡して確認しましょう。仕入れ目的の決済でも問題なく使えるカードもあれば、経費に限って認められる、個人利用以外の事業関連の決済はすべて認めないなど、カード会社によって判断は大きく分かれます。
個人事業の決済用にクレジットカードを作るなら、個人向けカードではなく個人事業主でも作れる法人向けクレジットカードに申し込むと安心です。法人向けカードの審査基準は個人カードとは異なるため、開始から日が浅い事業だと審査落ちする可能性が高いですが、法人カードが作れればすべての事業用支払いをカードで問題なく決済できます。
法人カードにもポイント還元などお得なサービスがあるので、本格的に個人事業を営む人は法人カードがオススメです。